クリエイター
五十嵐 祐貴Yuki Igarashi
1988年生まれ。明治大学在籍後、独学で絵を学びアニメ界へ踏み入った叩き上げのアクションアニメーター。「映像研には手を出すな!」3話にて、コンテ演出作監話数内デザイン、更に映像の6割の原画をたった1人で担う鬼才ぶりを発揮。原作者より“神回”と呼ばれ、放送前から大きな話題を呼んだ。「呪術廻戦」のEDでは1人で作画を担当。当映像は公開半年で2000万再生を記録し、週刊少年ジャンプに名前が掲載される異例の待遇に。特徴的なポーズは多くのパロディを生んだ。
WORKS
- スター・ウォーズ:ビジョンズ『のらうさロップと緋桜お蝶』(WEB/2021年)監督、キャラクターデザイン、絵コンテ、演出、作画監督、原画
- 『呪術廻戦』(TV/2020年)EDアニメーション 1人原画
- 『映像研には手を出すな!』(TV/2020年) 3話 絵コンテ、演出、作画監督、メカデザイン、プロップデザイン、原画
- 『モブサイコ100』(OVA/2018年) OPアニメーション 原画
- 『ボールルームへようこそ』(TV/2017年) OPアニメーション 原画
INTERVIEW
アニメとの出会いについて教えてください。 僕は子どもの頃に夕方アニメを見ていた最後の世代だと思います。学校から帰るとアニメをやっていて、それを見ていましたね。中学、高校ぐらいになると深夜アニメが増えていきました。アニメがあふれかえっているような幼少期を過ごして、アニメとゲームは2大エンターテインメントという印象でした。ただ、当時の僕はアニメを仕事にしたいとは思っていなくて。実は書道家になりたかったんです。
書道をずっとやられていたんですね。 小学校から始めて、高校生ぐらいの時までは「書道家になる」と思って活動していました。そのまま書道の道に進むのかなと思いつつ、絵を描くのも好きだったので、アニメなどの幼少期に慣れ親しんだ新しいコンテンツを書道に生かせたらいいなって考えたり。だけど書道の世界は伝統芸能的な側面があって。アニメとコラボしたいとはとても言えない(笑)。展覧会に来てくれるのは年齢層の高い人たちが多くて自分と同年代の人たちにアプローチできず、大学生になるとかなり悶々としていました。そしてアニメーションとかのエンターテインメントのことを考えるようになったんです。大学生の頃にアニメーターに興味が湧いたので、明確にアニメをやろうと思うまでにかなり時間がかかったほうだと思います。
はっきりとした夢があったのに、そこに自信がなくなっていく。辛いですね。 絵は趣味で描いてはいたけど、ほとんど素人レベル。今から専門学校に入り直すかどうか……と葛藤していました。当時アニメ業界を目指そうと思ったら、そんなに情報が多くはなかった。専門学校や映像系の大学で講師をやっている人に話を聞く方法と、直接会社に絵を送って見てもらう方法。僕は後者を選びました。
いくつかの会社に作品を見てもらって、アニメ業界に入ったんですね。
実を言うと、業界に入ってからも3年ぐらいは悶々としていました。「アニメ続けられるのかな」って悩んで、仕事をストップして。その頃に学生時代からの友人が仕事を紹介してくれたんです。浮世絵がモチーフになっている作品なので、筆で絵を描くシーンが出てくると。登場するキャラクターならではの描き方をアニメ的にアレンジした処理にしたい、それを動きでも表現したいということで、「筆作画」という仕事をやらせていただくことになったんです。そこで素晴らしい先輩方と出会って、技術的な指導はもちろん、人としての土台の部分も教わりました。
もともと業界に入る前は演出にも興味があったんですけど、この現場をきっかけに「これは作画を真面目にやらないとダメだな」と思って。今はアクションシーンとかの目立つシーンだけを描く人もいますけど、そこにいたアニメーターさんたちは、シーンをまたいで、演出に寄り添った作画をする方がすごく多かったんです。その技術の細やかさに非常に衝撃を受けました。演出のことも頭に入れながら作画をするということは、流れを自分でコントロールするということでもある。そこから「作画をちゃんとやろう」って切り替えました。
そして2021年に『スター・ウォーズ』と日本の7つのアニメスタジオがコラボレーションをした企画『スター・ウォーズ:ビジョンズ』の一作、「のらうさロップと緋桜お蝶」で初監督を務められます。 日本でやる以上、アメリカの人たちがやらないようなことをやったほうがいいだろうと思って、日本の要素をどううまく『スター・ウォーズ』の世界に溶け込ませられるかを考えました。まずはキャラクター。『スター・ウォーズ』自体キャラクター性が強い作品なので、魅力的なキャラクターを作って、そのキャラを中心に物語を展開しようと。そしてどうせやるなら自分が本当に好きなもの、自分が一番戦えるようなもの入れないと弱いと思ったんです。それで好きな「任侠モノ」にしてみました。もともと『スター・ウォーズ』は家族の話だし、そこに任侠の世界での家族の話をつなげてみようと。
ずっと「好き」から今につながっているんですね。今後どんなアニメを作ってみたいですか? 僕は『宇宙戦艦ヤマト』をはじめ昔のアニメをどんどん掘っていくのが好きなんです。昔はスケールの大きいSFアニメが多かったけれど、2000年代から割とSF要素って少し下火になり、日常系アニメが増えていきましたよね。僕は子供の時に、壮大な宇宙の物語を見てワクワクしていました。次はどうなるんだろう、地球はどうなっちゃうんだろうって。そういうでっかい話をやりたいので、SF作品を作ってみたいですね。