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スター・ウォーズ:ビジョンズ『タトゥイーン・ラプソディ』木村 拓監督×『のらうさロップと緋桜お蝶』五十嵐祐貴監督 スペシャル対談

――まず自己紹介をよろしくお願いします。

五十嵐 『のらうさロップと緋桜お蝶』の監督、五十嵐祐貴です。
木村 『タトゥイーン・ラプソディ』監督、木村拓です。

――お互いの作品に関する感想を伺わせてください。

五十嵐 (タトゥイーン・ラプソディは)めっちゃ楽しい作品でした!EP4の楽天的な感じがありつつ、今回の『ビジョンズ』の中で唯一チャンバラをしない作品で企画として攻めている印象があります。SWキャラをデフォルメされた可愛い日本の絵でやるのは新鮮で挑戦的だと思いました。

木村 ありがとうございます、とても嬉しいです!

――木村さんは『のらうさ』いかがでしたか?

木村 素晴らしかったです!ほんとに。作画や美術のビジュアル面が映画作品に引けを取らないほどに完成されていて、感動しました。テーマ性においても「血の繋がり」を重視するSWシリーズの中で「血の繋がりは関係ない」というメッセージを込めるというのはとても意味のある事だと思いました。

五十嵐 80~90年代のアニメの雰囲気は意識しました。SWに影響を受けたクリエイターさんたちが活躍していた時期なので、その雰囲気をどう再現しようかと。

木村 スタッフさんは若い方が多かったんですか?

五十嵐 結構若い人ばかりでした。美術の金子雄司さんやメカデザインをやっていただいた出雲重機さんなどは一回り上でしたが、「小さい頃からSWを見ていて、SWに関わることを夢見ていた世代」といった感じです。『タトゥイーン』も全体的に若いクリエイターさんが多そうでしたよね。

木村 若いですね。SWを知らない人達もたくさんいました。モブキャラにしても元々の世界観があるため、あまり自由に描けないので、まずSWの説明から入らないといけないのが大変でしたね(笑)。

五十嵐 今回の僕らの作品はSWを見ていない人に広げるという目的もあったと考えてます。今の若い人はあまりSWを見てない人が多く、とりわけ女性はあまり見ていない印象です。僕ら若手の新参者の手による『のらうさ』や『タトゥイーン』などは「なんか楽しそうだぞ」と思っていただくことが大事なのかと(笑)。
他の『ビジョンズ』の監督陣の作品は、ベテランの風格を感じさせるものだったと思います。EP4〜6を当時見ていたかで、感じ方や思い入れなどがだいぶ違うんじゃないかなと思います。僕らはEP4~6をリアルタイムで見れてないので……すみません。

木村 見たかったですよね(笑)。五十嵐さんは初めて劇場で見たSW映画はなんですか?

五十嵐 あまり映画館に行く家庭じゃなかったので、映画館で見たのはEP7です。それ以前はテレビ放送で見てましたね。TVにかじりついて見てました。木村監督は?

木村 僕はEP3から劇場で見てましたね。EP3もギリギリ見れた感じでした。当時は小さかったのであまり自分の意思で映画館に行けずにいて。

五十嵐 そうですよね。僕も、自分でお金が使えるようになってから映画館に通うようになりましたね。EP7の上映初日に新宿のTOHOシネマズに見に行きました。もうその当時は自分も今の業界に入ってましたね。

木村 18時30分(全世界同時上映の時間)の上映で見ました!?

五十嵐 その一本後でしたね(笑)。ライトセーバーでコスプレしている初上映組を見送りながら、劇場に入りました。リアルタイムでSWの熱気を感じられたのはシークエル(EP7、8、9の続三部作の事)が始まったこの時で、とても楽しかったです。

木村 いいなぁ。またこういうお祭りの様な、盛り上がれるような機会が欲しいですよね。僕は、EP8は東京で見たんですが、EP7は地元の滋賀で見ました。滋賀ではライトセーバー持っている人はいなかったので、滋賀にはジェダイはいないんだなと思いました(笑)。

五十嵐 (笑)

――この企画のお話が来たときに率直にどう思われましたか?

五十嵐 率直に言って「詐欺なのかな」って思いました(笑)。『映像研には手を出すな!』で自分が担当した話数が放送されて三日後くらいにツインエンジンの方からいきなり「SWアニメ化のコンペを一緒にやりましょう!」ってGmailが来て。どう考えても怪しいなぁと(笑)。
『クローンウォーズ』の監督(デイブ・フィローニ)もいきなりSWの企画の電話が来てドッキリだと思ったという話がありましたが、多分同じ感じです。

木村 あ、その話知ってます(笑)。

五十嵐 今回の企画内容を聞いて「自由にオリジナリティを出しながら、既存の物に囚われずに新しいSWを作ってくれ」というボールを遠くに投げてくるオファーで、どうしたもんかなと思いました。どこまで変えていいのかと戸惑いながら、SWの核になる部分を考えていきました。『マンダロリアン』をちょうど見ていた時期なので、この作品の様に「マニアックなことをやりつつ、メジャーである」といった温度感を参考にしつつ、新規のお客さんにも満足していただけるように企画を作っていきました。

木村 自分の場合はお話をいただいた時は他人事に思えて、「結局他の人がやるんだろうな」と考えていたのですが、企画が通った後に「ほんとに自分がやれるのか、この企画?」と(笑)。やり始めてからも実感はあまり湧きませんでしたね。企画の立ち上げに関しては「自由な企画」ということでいただいたので、他の企画は黒澤明監督をリスペクトしたような「日本文化へのフィーチャー」や「ライトセーバーでの戦闘」が多いだろうと思い、それとは全然違うものを作ろうとして、あえて音楽ものの企画にしました。

五十嵐 音楽で、しかもロックに挑戦していくというのは木村監督の個人的な理由などはあるんですか?

木村 ロックには「反骨精神」みたいなものがあるので、体制に対して立ち向かって行く個性的な4人のバンドメンバー達というパーティーを意識しました。自分自身EP4や『反乱者たち』などのチームで動く感じが好きなので。SW世界ではジャズなどはあるので、「違う音楽がこの銀河にあってもいいのではないか」と世界を広げるという意味でもロックバンドを選びました。

五十嵐 木村監督ご自身が音楽をやってたりというのはなかったんですかね?

木村 怒られてしまうかもしれませんが、音楽をやったことはないんですよね(笑)。聴くのは好きなんですけどね。

五十嵐 最初のライブシーンの閑散としてる感じは高円寺のライブハウスっぽくてご経験者なのかと思いました(笑)。

木村 あのシーンは大学時代に友人のバンドのライブに行ったことを思い出して作りました。

五十嵐 ライブシーンではドロイドが演奏せずにぐるぐる回ってたのが印象的でしたね。

木村 あれはスピーカーがモデルなんです。『のらうさ』でもドロイドが出てましたよね。他の作品でもドロイドが出てきたので、やっぱり定番なんだなと。

五十嵐 出すと絵面がスターウォーズらしくなるというか、凸凹感というか、ほっこりしますよね。

木村 シリアスなシーンでもメリハリがききますよね。ドロイドは出して正解でした。それぞれのドロイドがグッズになって欲しいですよね。

五十嵐 そこを目指して作りましたよね(笑)。SWとおもちゃは切っても切り離せないエンタメ性があると思うので。グッズ化やおもちゃ化は今か今かと待っております(笑)。今回の企画も、オムニバスですけどエンタメ的というか。「SWの1番いいと思っている部分」を各スタジオで追求しているので、新規のお客さんにも開かれている企画ではないかと思います。映像としてもかなりバラバラなので驚きました。他の作品を見て、「これやりたかったなぁ」と思ったりしました。「上手くやってるなぁ」と(笑)。

木村 自分で選んだ道なので後悔はないですが、一生で一度あるかないかのこの企画でライトセーバーでチャンバラしなかったのは、少し後悔ですね(笑)。

五十嵐 宇宙に出るのもやりたかったですよね。でも最初宇宙のシーンから始めたら、他の作品と被る事になってましたね。

木村 「嫌な予感がする」とかもそうですよね。

五十嵐 色々な作品に被って出てくるので、新規のお客さんにも「SW的に重要な要素」として認識されてよかったのではないかと思いますね。

――被ると言うと、奇しくも二作品とも作曲家の出羽良彰さんが音楽を担当されていますが、音楽を発注された際の思いなどはありますか?

五十嵐 木村監督からお願いします。音楽物なので語る事が多そう。

木村 そうですね(笑)。やっぱり既存のSW曲をロックに変えるというのは不安でしたね。SWの音楽はSWらしさを出すのに一役買っていますので。せっかく挑戦的な作品なので劇中の曲もロック縛りで挑戦してやろうとしてましたが、やはりずっと不安でした。劇中歌は映像が出来る前に発注したので、指示も抽象的になってしまいもどかしかったです。

――ネットではジェイ役の声優さんである吉野裕行さんの歌声が良かったと評判でしたが……

木村 それは謝らないといけないですね。実は歌の方が先にあって(先に他の方に歌っていただいていて)吉野さんの起用は後だったんですよね。声が似すぎていてなかなか気付かれないですが。これはトリビアとして(笑)。

五十嵐 へぇ、気づきませんでした!劇中歌の発注はどうしたんですか?

木村 『黒猫チェルシー』というバンドのボーカルの方のしゃがれ声がすごい好きで、そういったイメージの曲を発注させていただきました。あまり綺麗過ぎない感じと言うか。今回自分の方はロック縛りでしたので、『のらうさ』を見て出羽さんの幅の広さにびっくりしました。「SWみたいだ」と思って。

五十嵐 『のらうさ』ではオーケストラや和風の曲など複数のタイプの曲を使用したいと思っていました。そんな幅の広い曲を打ち込みで作れる方がやはり出羽さんしかいなかったですね。頂いたデモを聞いてみたらSWに似た世界観の音楽があって、「この人なら大丈夫だ」と確信しました。
音楽で言うと今作はフィルムスコアリングで挑戦したのですが、普段のアニメ制作と違って、なかなか難しいところがありました。展開に合わせて音楽の起伏を考えていくなど、面白い部分ではあったんですけどね。序盤の帝国のシーンではオーケストラ風の曲にして、主人公たちのお話にシーンが移ると和楽器や東洋の楽器等を使った和風の曲へ変わり、最後にはその二つが混ざっていくようにしました。最近のゲームで『ゴースト・オブ・ツシマ』というゲームをプレイしていたのですが、そのゲームも和楽器とオーケストラを混ぜたような曲がBGMになっていて、出羽さんにもそのゲームを参考にしていただきました(笑)。

――制作中、これが大変だったというものは?

木村 自分は初監督作品で苦労しましたね。ですが、監督なので弱々しい姿を周囲に見せるのはダメだなと思って、なるべく堂々としようとしていました。スタッフの方々が本当に素晴らしかったので、それ以外の苦労は思ったより少なく、スムーズな制作でしたね。ディズニーさんやルーカスフィルムさん側からのNGもあまりなかったです。ジャバ・ザ・ハットとかボバ・フェットとかを出すのを止められるかなと思ったんですが、むしろノリノリで賛成していただいて(笑)。

五十嵐 こっちは企画自体は早い段階で決まったものの、どれくらいSW成分を強めていくのかで二転三転しましたね。脚本や設定など、最初はもっと攻めた内容でしたので「これはSWじゃなくなるぞ」みたいな(笑)。軌道修正していくうちに最終的にはハイブリッドにしていく方向性になりましたね。新規のお客さんを楽しませつつも、マニアの鑑賞にも耐えうる物を作ろうとしました。
マニアでいうと、メカ設定をやってくれた出雲重機さんはSWにとても詳しい、日本のファンサイトを運営してたくらいのガチの人で。ジョーゼフ・キャンベルの本などを勧められて、読んだりしましたね(笑)。出雲さんのノートを見せていただいた時に向こうのスタジオに行った話とかが書いてあって、面白かったです。美術の金子さんも筋金入りのSWファンで、そういったSWに詳しい人たちのお知恵を貸していただけたので、設定を固める際に大分助かりました。

木村 こちらの方は周りに詳しい方があまりいなかったので、大分自分で調べたり、苦労は多かったですね。好きと言っても全部を知っているわけじゃないので(笑)。

五十嵐 今手に入れられない本とかが山のようにあるから、設定を知るのも大変ですよね。古本を探すのも一苦労で……。リアルタイムで追っかけてないと難しいなぁと思います。

木村 グッズとかもどんどん増えていきますもんね(笑)。

五十嵐 買う物もしっかり選んで買わないときりがないですよね。『マンダロリアン』の小っちゃいブリスターパックは集めています。

木村 『マンダロリアン』お好きなんですね。

五十嵐 めちゃくちゃ良いと思いましたね。シーズン2でMCU並みにキャラクターがアッセンブル(集結)してて、「本編乗っ取ろうとしてない?」と(笑)。キャラもめちゃくちゃいいんですよね。『マンダロリアン』は常に意識しながら作ってましたね。

木村 「伝家の宝刀」もダークセーバーを意識されてますよね(笑)。

五十嵐 『マンダロリアン』やっぱいいなぁ……。映画とかやってほしいですけどね。SWの話してると永遠に終わらないですね。今度飲みながら話しましょう(笑)。

――最後にお互いへこれだけは聞いておきたい事はありますか?

木村 作中に出てくるフルーツは『反乱者たち』に出てくるメイルーランですか?形が似てるなぁって思って(笑)。

五十嵐 参照はしていますが、明確にメイルーランって意識はしてないです。

木村 すみません、今の質問はジャブです(笑)。ずばり続編の構想はあるんですか?

五十嵐 ありますね!とにかく宇宙に出たいですね。ロップが闇落ちしたお蝶と帝国を追いかけながら宇宙に行って、反乱軍と合流したり、珍道中を繰り広げるみたいな構想です(笑)。 ロップの種族の話もやりたいですね。

木村 闇堕ちした仲間を追うっていうのは、『レジスタンス』のタムや『バッド・バッチ』のクロスヘアーとは逆で面白いと思います。

五十嵐 最終的にハッピーエンドになればいいなと思ってまして、お蝶を追っかけていって仲直りしてくれれば嬉しいと思ってます。『タトゥイーン』の方は?

木村 呼ばれればどこでもライブに駆けつけますよ! 毎回タイトルが変わるのかもしれないですね。『エンドア・ラプソディ』『コルサント・ラプソディ』とか(笑)。 帝国も出したいですよね。

五十嵐 帝国でライブは熱いですよね。ライトセーバーをサイリウムにしたりとか(笑)。

木村 そのアイデアいただきです(笑)。

五十嵐 流石に怒られそうですね(笑)。

木村 それくらいの方が今回の作品はいいんじゃないかと(笑)。

五十嵐 そういえば『タトゥイーン』のハット族のギーはジャバの親戚なんですか?追われてたので何か悪いことしたのかなと。

木村 一応甥っ子ですね。何かジャバに借りがあるのかなといった様子です。

五十嵐 バンド組むにあたってジャバにお金を借りたのかなとか。

木村 かっちり決めている訳じゃないですけど(笑)。

――お二人とも初監督ということで、今作を経て次の作品への構想や希望などはありますか?

木村 エンタメ性重視というか、楽しめる作品を作りたいなと思っております。従来の日本のアニメに囚われずに様々な表現に挑戦していきたいです。

五十嵐 僕もエンタメやりたいという意識はあります。特に自分はキャラクターが好きというか。日本のアニメ漫画はキャラクター文化なところが大きく、ストーリーよりもキャラクターが引っ張っていくという印象です。今回の作品もキャラクターを立てることを重視しました。自分の好きな尖った映像を作りたいとも思いつつ、これからもキャラ重視のエンタメ性の高い作品を作りたいと思います。

――お二人の今後の作品に期待ですね!本日はありがとうございました!

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